受賞者 | 吉本 剛 |
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作品名 | BARN-6 |
職業 | 建築設計監理 |
作品の コメント |
敷地 同じファサードの5軒の住宅が、すき間なくひしめきあうように並んで建っていた。この中の一軒の住宅の建替えの計画である。敷地は5m×15mで奥に長い形で、建替え前の建物の内部は、奥に行くほどに暗く、とても狭かった。道路に面する部屋だけが明るかったが、道路の向かい側(地上4m)を数分おきに電車が通過するため、窓は閉じられカーテンが引かれていた。また、準防火地域内にある幅が狭い土地のため、敷地全体に延焼線がかかっていた。 計画 外周の4面に防火構造の壁を立て、周囲からの音と視線を遮った。その壁の内側には、外から覗かれない、明るく開放的で、外気と一体となるような住環境を作ろうと思った。 入り口の格子戸をくぐり、建物に入ると、幅2mの細長い通り庭が現れる。通り庭に面するスペースはフォトグラファーであるご主人のオフィスである。通り庭のつきあたりは住居のゾーンの内玄関である。オフィスの前に植えられた植栽は、1階の通り庭に潤いを与え、そのまま伸びて2階のダイニングテラスが外部であることを認識させ、そのまま伸びて3階の風呂場の窓に達する。通り庭とダイニングテラスに設けた4枚の木製建具を開け放すと、建物内のすべてが流動的につながる。ダイニングからダイニングテラスに出て、浴室や便所へ移動する時の感覚は、農家の離れにある水回りへ移動する時の感覚に似ている。 構造と断面の寸法 予算を押さえた計画としなければならなかったが、地盤面下12mまで支持層がなかった。費用のかかる特殊な構造、重い構造、被覆しなければならない木造3階建などを選択肢からはずし、鉄骨造のブレース構造を選択することとした。敷地は、第2種高度斜線の規制がかかっているため、約7mの高さの中に3層の空間を入れなければならなかった。各階の階高は約2.3m。各階の天井高さは2.1m。梁下は1.9mとした。天井高さの低い場所は天井の高い場所と連続させ、圧迫感を感じない構成とした。 |
スレートを具体的に住宅に使用した作品はいくつかあったが、この作品はその中では最もデザイン密度の高い作品である。プランニングも良好で、スレートをしっかりと小住宅の中で見事に使いきっている作品といえる。ただ少し注文を付けさせてもらうとすると、街路に対する表現に乏しい。外に対する植栽も検討すべきではないかと思える。